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宗教の作り方

How to Make Religion
第零版
最終更新日――2011年7月31日(日)

目次

はじめに

2008年2月に、私は、 「共存教」(includism)という宗教を作って、 それについて記述した 「拡張可能経」 (Extensible Sutra)という経典を公開しました。 この宗教の教義は、簡単に言えば、 「宗教というのは誰にでも作ることができる」ということです。

しかし、「誰にでも作ることができる」とは言っても、 作り方が分からなければ作ることはできません。 そこで私は、 宗教というものはどのようにすれば作ることができるのか、 ということについて 分かりやすく解説する経典を書くことにしました。 そうしてできたのが、この経典です。

ただし、この経典が解説しているのは、 あくまで「自分の宗教」の作り方です。 つまり、 自分が信仰する宗教を自分で作りたいと思っている人を 読者として想定して書かれているということです。 自分以外の誰かに信仰してもらう宗教を作りたい と思っている人までは想定されていない、 という点にご注意ください。

[第一節]自分の宗教を自分で作るメリット

私たち人類は無数の宗教を持っています。 ですから、「宗教なんて、 既存の宗教の中から一つを選べばそれで十分に用が足りるのに、 どうしてわざわざ自分で作る必要があるんだ?」 と疑問に思う人も多いでしょう。 そこで、宗教の作り方についての解説を始める前に、 自分の宗教を自分で作ることにはどのようなメリットがあるのか、 ということについて説明しておきたいと思います。

自分の宗教を自分で作るメリットは、 自分自身に最適化された宗教を信仰することができる、 というところにあります。

人間が宗教に求めているものは各人各様です。 ある人は現世利益を求め、またある人は人生の目的を求め、 またある人は永遠の生命を求め、 またある人は世界の平和を求めて宗教を信仰します。 にもかかわらず、 万人を満足させる万能の宗教というものは存在しません。 そして、無数にある既存の宗教の中から、 自分を満足させてくれる最適の宗教を探し出す、 ということは至難の業です。 だからこそ、宗教を自分で作ることに意味があるわけです。 自分で作る宗教には、 自分が宗教に求めているものを何でも盛り込むことができますから、 それは自分自身に最適化されたものになるはずです。

[第二節]宗教と入れ歯の類似性

「はじめに」でも書きましたが、この経典は、 宗教の作り方について解説したものです。 でも、みなさんは、 「宗教を作ることができる人っていうのは 普通の人とは違う特別な人のことだ」と思っていませんか。 もしもそう思っているとしたら、 その考えは改めていただきたいと思います。 なぜなら、 宗教というのは誰にでも作ることができるものだからです。

宗教は誰にでも作ることができるものだということ、つまり、 教祖になろうと思ってなれない人間は 一人もいないのだということを、 共存教では、 「万人教祖主義」(omnifundatoresism)と呼んでいます。

「宗教は誰にでも作ることができる」という教義を持つ 共存教という宗教を私が作った背景にあるのは、 複数の人間が同じ宗教を信仰しているという現在の状態に対して 私が感じている違和感です。 人間が宗教に求めているものは千差万別なのですから、 宗教のほうも、 一人一人の人間ごとに 千差万別でなければならないのではないでしょうか。

宗教というのは入れ歯に似ています。 入れ歯に既製品というものはありません。 個々の入れ歯は、 それぞれが世界にただ一つしか存在しないものです。 なぜなら、入れ歯というのは、 それを必要とする人に合わせて作られるものだからです。 入れ歯と同じように、宗教についても、 一人一人の人間が 自分に適合したものを信仰するというのが理想です。 複数の人間が同じ宗教を信仰しているという現在の状態は、 とても不自然な状態なのです。

ちなみに、 入れ歯というのは歯科技工士さんが作ってくれるわけですが、 現在のところ、 必要とする人に適合する宗教を作るという職業の人は存在しません。 ですから、自分に適合した宗教がほしいと思う人は、 自分でそれを作るしかありません。

[第三節]宗教の名前って固有名詞?

英語の文法には、 固有名詞の先頭の文字は大文字で書くという規則があります。 たとえば、知美はTomomi、日本はJapan、土星はSaturnと書きます。 ところで、宗教の名前というのも、キリスト教はChristianity、 イスラームはIslam、仏教はBuddhismというように、 先頭の文字を大文字で書くのが普通です。 これは、宗教の名前というのが固有名詞だからでしょうか。

宗教というのは思想の一種です。 思想の名前は、固有名詞ではなくて普通名詞ですから、 共産主義はcommunism、ナショナリズムはnationalism、 フェミニズムはfeminismというように、 その先頭の文字を小文字で書きます。 宗教も思想の一種ですから、宗教の名前も、 固有名詞ではなくて普通名詞のはずです(ただし、 経典の題名や教団の名前は固有名詞ですが)。 宗教の名前を書くときに先頭の文字を大文字にするのは、 固有名詞に由来するからという理由か、 単に大文字にする習慣があるからという理由によるものであって、 それが固有名詞だからという理由によるものではありません。 ついでに言うと、宗教の名前だけではなくて、 JapaneseとかEnglishとかChineseというような言語の名前も、 先頭の文字を大文字で書きますが、 やはり固有名詞ではなくて普通名詞です。

固有名詞というのは個物を指示する名詞で、 普通名詞というのは概念を意味する名詞です。 宗教の名前が固有名詞ではなくて普通名詞だということは、 宗教というのは個物ではなくて概念だということを意味しています。

どのような概念も、 階層的な構造の中に位置付けることが可能です。 この階層的な構造の中では、上にあるものほど一般的な概念で、 下にあるものほど特殊な概念です。 二つの概念の間に、 一方を特殊化したものが他方だという関係が成り立っているとき、 一般的なほうの概念を、 特殊なほうの概念の「上位概念」と言います。 逆に、特殊なほうの概念を、 一般的なほうの概念の「下位概念」と言います。 たとえば、三角形の上位概念は多角形で、三角形の下位概念には、 直角三角形や二等辺三角形などがあります。 宗教というのも概念ですから、宗教もまた、 階層的な構造の中に位置付けることが可能です。

共存教では、二つの宗教の間に、 一方を特殊化したものが他方だという関係が成り立っているとき、 一般的なほうの宗教を、 特殊なほうの宗教の「基底宗教」(base religion)と呼びます。 そして、それとは逆に、特殊なほうの宗教を、 一般的なほうの宗教の「派生宗教」(derived religion)と呼びます。 たとえば、大乗仏教の基底宗教は仏教で、大乗仏教の派生宗教には、 華厳宗や浄土宗などがあります。

ちなみに、 「宗教」(religion)という名詞が意味しているものも一つの宗教で、 それは、あらゆる宗教の基底宗教だと考えることができます。

[第四節]既存の宗教を拡張しましょう

人類は、古来よりさまざまな宗教を作ってきました。 では、「宗教を作る」というのは、もう少し具体的に言って、 何をどうすることなのでしょうか。

私は、「宗教を作る」というのは、 既存の宗教を特殊化することだと考えています。 つまり、既存の宗教に何かを追加することによって、 それをさらに特殊なものにすることが、 「宗教を作る」ということだと考えているわけです。 ちなみに、共存教では、 既存の宗教に何かを追加することを意味する言葉として、 「拡張する」(extend)という言葉を使います。

宗教を作ろうと思った人が、 まず最初にしないといけないことは、 これから作る宗教の基底宗教をどれにするかを決めることです。 キリスト教や仏教のような世界的な宗教を 基底宗教にしてもかまいませんし、 もっとも一般的な宗教、 つまり「宗教」という宗教を基底宗教にしてもかまいません。

基底宗教をどれにするかが決まったら、 次に、それを拡張しましょう。 先ほど説明したように、宗教を拡張するというのは、 その宗教に何かを追加するということです。 では、何を追加すればいいのでしょうか。

基底宗教に何を追加すればいいか ということを発見するために必要なことは、 「超自然的なことで、 ぜひそうであってほしいと自分が思っていることは何か」 と考えることです。 それはたとえば、 「すべての生物は死んだのちに天国で暮らすことになる」とか、 「善行をすれば、それに対して褒賞が与えられる」とか、 「宇宙を創造した者には目的があって、 すべての人間はその目的のために必要とされている」 というようなことです。 そして、「そうであってほしい」と思っていることの中に、 基底宗教に含まれていないものがあるならば、 それを追加すればいいわけです。

それでは、 「そうであってほしいと思っているものは すべて基底宗教に含まれている」という場合は、 どうすればいいのでしょうか。 そのような場合は、あなたがこれまでに出会った言葉の中で、 「そうであってほしい」と思ったものがないか、 振り返ってみてください。 そして、それが見つかったら、 それを基底宗教に追加しましょう。

さて、それでは、 「そうであってほしいと思っているものは すべて基底宗教に含まれているし、 これまでに出会った言葉の中で、 そうであってほしいと思ったものもない」という場合は、 いったいどうすればいいのでしょうか。 そのような場合は、 追加するものをどこかから仕入れてくる必要があります。 基底宗教に関するもの以外のさまざまな本を読んでみましょう。 宗教とは関係のない本でもかまいません。 本だけではなくて、さまざまな人の話も聴いてみましょう。 そうすれば、それらの中に、 基底宗教に追加するべきものを 発見することができるかもしれません。

たとえ、 基底宗教に追加するべきものがなかなか見つからなかったとしても、 あせる必要はありません。 たっぷり時間をかけて、 追加するべき何かを探してみてください。

[第五節]共存の状態を保ちましょう

基底宗教の拡張というのは、 基本的には何を追加してもかまわないのですが、 一つだけ注意しないといけないことがあります。 それは、 矛盾を発生させてしまうようなものを追加してはいけない、 ということです。

宗教が矛盾を含んでいない状態のことを、共存教では、 「共存」(inclusion)の状態と呼んでいます。 共存の状態にない宗教、 つまり矛盾を含んでいる宗教を信仰するというのは、 不可能なことです。 ですから、宗教を作ろうとしている人は、 自分の宗教に何かを追加するとき、 それが既存の何かと矛盾しないかどうかに 注意を払わないといけません。 たとえば、 「神の個体数は常に一定である」という教義を含んでいる宗教に、 「人間は死んだのちに神となる」という教義を追加すると、 矛盾が発生してしまいますので、 そのような追加をしないように注意する必要があります。

自分の宗教にどうしても追加したいものがあるのだけれども、 それを追加すると矛盾が発生してしまう、という場合は、 擦り合わせが必要になります。 「擦り合わせ」(adjustment)というのは、 追加や削除や修正などによって、 矛盾が発生しないように調整をすることです。 たとえば、先ほどの例で言えば、 「神の個体数は常に一定である」という教義を、 「神の個体数と人間の個体数の和は常に一定である」と修正して、 「人間の誕生というのは神が受肉することである」 という教義を追加することによって、 「人間は死んだのちに神となる」という教義を追加したとしても 矛盾が発生しないようにする、 というような作業が擦り合わせです。

基底宗教を拡張するというのは、基本的には、 基底宗教に何かを追加することなのですが、 基底宗教に含まれているものは 絶対に削除したり修正したりしてはいけない、 ということはありません。 共存の状態を保つために必要ならば、 基底宗教に含まれているものを削除したり修正したりしても、 問題はありません。

[第六節]名前を付けましょう

既存の宗教を拡張して自分の宗教ができたら、 次にしないといけないことは、それに名前を付けることです。 「○○教」というような、 宗教の名前だということがすぐに分かるものが望ましいわけですが、 そうでなくてもかまいません。 基底宗教の名前を冠して、 「○○教□□派」というような名前を付けてもかまいません。 基底宗教が仏教系の宗教の場合は、 「○○教」よりも「○○宗」のほうがいいでしょう。

[第七節]経典を書きましょう

自分の宗教ができて、名前も決まったら、次は、 その宗教の経典を書きましょう。 ただし、 宗教には必ず経典がないといけないということはありませんので、 経典は、書いても書かなくてもどちらでもかまいません。 しかし、私は、経典を書くことを強く推奨したいと思います。 なぜなら、人間の記憶というものは時間とともに風化するからです。 せっかく自分の宗教を作っても、 それを記憶の中だけに留めておいたのでは、 時間が経過するのに伴って、 細部を思い出すことがしだいに困難になっていきます。 経典を書くことによって自分の宗教を記録しておけば、 それを読み返すことによって 記憶をリフレッシュすることが可能です。

経典の中に書かないといけないことは、まず第一に、 基底宗教は何かということです。 ただし、もっとも一般的な宗教、 つまり「宗教」という宗教を基底宗教として使った場合は、 基底宗教が何かということを書く必要はありません。

次に、 基底宗教に何を追加したのかということを書かないといけません。 もしも、共存の状態を保つために、 基底宗教に含まれているものを削除したり修正したりした場合は、 そのことについても書いておく必要があります。

経典の中に書かないといけないことは、以上の二つだけです。 そのほかに、絶対に必要というわけではありませんが、 宗教に付けた名前も書いておいたほうがいいでしょう。

経典は、それを自分の手元に秘匿するならば題名は不要ですが、 公開する場合は、題名を付ける必要があります。 経典の題名としては、 「○○書」とか「○○経」というような形式が一般的ですが、 そのような形式にこだわる必要はありませんので、 自由に考えてみてください。

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